キャラクターシート:蛭子堂
蛭子堂(えびすどう)
本名不明、年齢不詳、性別不明の〔蛭子堂〕店主にして呪術師。
本人の技量の高さからその筋ではかなり名が通っているらしいが、当人は出世や栄誉名声の類にはまったく興味がない。
その気になれば呪術で国一つ意のままにできる、とさえ囁かれているが、本人はただの噂だと笑い飛ばしている。
しかしその腕は確かであり、本人も私欲で呪術を使うことを自身に対して固く禁じている。
経緯は不明だが左目がなく、また生まれつき左足が不自由なうえ、左手も少々不如意。
特に左手は年々麻痺が進行しており、本人曰く「相当楽観的に見積もってもあと十年保たない」とのこと。
これは呪詛を使った際の反動や返された呪などをすべて左手に封じているため。
客の頼み事は基本的に使役している付喪神にまかせているが、人の心に関する依頼や復讐のような人の命を扱うような依頼に関しては自ら動く。
長身で痩せ型、長い白髪を丁寧に結いあげ、ワイシャツにネクタイを締めた上から艶やかな着物を羽織るという珍妙な格好をしている。
喫煙者で煙管を愛用している。歩行の際は杖をついている。
甘味、とくに落雁や金平糖を好んでよく食べている。日頃は節制しているが酒も好きであり、ひと仕事を終えたあとには朝から飲みはじめ、一日中飲んでいることもある。
逆に肉類を受け付けない体質で、生まれてから口にしたことはないという。
実家はその界隈で名の知れた呪術師の家系であり、本人も後継ぎとして将来を期待されていたが、思うところがあり出奔。
そのときに名前は捨てた、と本人は語る。
無知を嫌い、偏見を厭い、根拠のないことは語らない。
趣味は喫茶店巡りと古物の収集。そのため集めた古物がしばしば付喪神と化し、結果として使役されている。
「やあ、いらっしゃい」
「この店に来た、ということは……さて、何がお望みかな?」
「出世とか名声とか興味ないんだって、ほんと」
「一生こんな店の店主でいいのかって? いいよぉ、気楽だし」
〔蛭子堂〕
表通りを外れた路地裏に建つ店。外に面した窓には古びたポスターがべたべたと貼られて中はまともに見えず、古い恵比寿の狂言面がかけられ、雨風にさらされてペンキが剥げかけたドアには、つかんだら即座にもげてしまいそうなドアノブが取り付けられている。
いわゆる何でも屋であり、失せもの尋ねものに恋愛成就、あるいは表に出せないような、恨みつらみを晴らして欲しい、などという頼みまで、店主が承諾したことならばなんでも引き受けてくれる、という噂。
しかし立地の悪さか、それとも到底店とは思えないような外装のせいか、年中閑古鳥が鳴いている。
ドアのそばに「蛭子」と書かれた表札が出してあれば、店が開いている印である。
が、表札が出ていないときにも店の中から何者かの気配や物音を聞いた、という話がまことしやかに囁かれている。